願わくば、
もう一度。
02
これが、精一杯だった。
ウシオは、つとめて明るく振舞おうとするイズミから目を逸らす。――ごめんなさい、イズミさん。
これが精一杯だったのだ。アクア団の一員として何も間違っていないのだから気にするなと、それしか言えなかった。……彼女を、責めたくはなかった。
それでも、どうしたって彼女を許せない気持ちが、ウシオの中にはあったのだ。それを無くすことができないまま、ウシオはイズミと再会してしまった。――どうして、どうして助けてくれなかったんですか?
イズミの行動を許したい、同じアクア団の一員として責めたくないという気持ち。そして、ウシオという一人の人間として、イズミの行動を許せないと思う気持ち。
相反する二つの感情に苛まれながら絞り出した答えが、前者の気持ちだけを伝えることだった。恨みの声は、一度口に出してしまえば決壊してしまいそうだった。
あの日、本当に死ぬかと思った。あの海の冷たさを、恐ろしさをウシオは一生忘れないだろう。海を美しいと、守りたいと思う気持ちは今も変わらない。それでも、以前よりも海に近付く回数が減ったのは紛れもない事実だった。……雨の日の海に、近付けなくなった。
それが、どうしようもなく悲しかった。
ごめんなさい、イズミさん。
貴方は悪くないんです。これは私の気持ちのありようの問題なのです。
あの日の貴方は、この海のために最善を尽くそうとしていました。結果が全ての世の中だとしても、共に戦った仲間がその過程を認めなければ誰も前に進めないでしょう。
アクア団の一員として、貴方を誇らしいとさえ思うのです。その気持ちに嘘も偽りもありません。貴方のように、私も最後までこの海のために戦いたかった。
それでも、私の中には貴方を許せない気持ちがある。どうして助けてくれなかったのだと責める気持ちがある。……私が弱かっただけの話なのに、責任転嫁もいいところだ。
ごめんなさい、イズミさん。
貴方の謝罪を、私は受け止めたいと思っています。あとは私が、それをどう整理するかということに尽きるのです。
それを、言ってさしあげるべきなのです。分かっているのです、それでも伝えられない。……私個人としてはまだ、貴方を許せていないのです。
私は貴方に再び会うことができて嬉しかった。貴方が生きていてくれて、本当に良かった。私だってそう思うのに、心の底からそう思っているはずなのに、どうして許せないのでしょう。どうして貴方の涙を拭ってあげられないのでしょう。どうして、この腕は動かないのでしょう。
どうか泣かないでください、貴方は何も悪くないのです。
私は今でも海が好きです。……少し怖いと思うときもありますが、やはり好きです。この母なる海が。
だから、イズミさん。
もしも、もしも貴方が許してくれるのなら。私はもう一度、貴方とともにこの海のために生きたい。
きっと生きているであろうシズクさんと三人で、もう一度、この海のために。
願わくば、もう一度。