ハッピーエンドは
すぐそこに
「ウシオさん」
いつまでも暗い顔はしていられない、とイズミは立ち上がった。自分が暗い顔をしていれば、この心優しい仲間は今度こそ泣いてしまうだろう。それはイズミの望むところではないのだ。
目の前に広がる海はまだ青い。しかしあと二、三時間もすれば、ここは鮮やかな橙色に染まることだろう。それはとても見てみたい景色ではあるものの、重要なことはそれではない。イズミにとって重要なことは、もうじき夜になる、ということだ。
「ウシオさんは、今日の夕食はどこで食べる予定ですか?」
「え? と、特に何も決めていませんが……」
「でしたら、どうでしょう。このあと一緒に食べませんか」
イズミの言葉に、ウシオはぽかんと口を開けて彼女を見上げている。
「美味しいところを知ってるんです」
「……えっと、あの……いいんですか?」
「もちろんです。……むしろ、こちらが聞くべきことです」
そう言って、イズミはウシオに手を差し出した。
「ウシオさん。私とまた、一緒に食事をしてくれますか。……私とともに、来てくれますか」
「…………」
震えないようにと自分に言い聞かせても、どうしてもイズミの手は震えてしまった。その手を、ウシオはじっと見つめている。……イズミが一番心配すべきことは、ウシオがどう思うかだ。
もしもウシオが無理をしてイズミとともに居ようとするようであれば、離れるべきだ。イズミは彼と共に在りたいと思う、しかしそれがウシオにとって負担であるならば、自分は彼の前から消えるべきなのだ。
だが、イズミのその考えは杞憂だったらしい。震えているイズミの手を見たウシオは少しだけ泣きそうな顔をして、しかし少しだけ嬉しそうな顔もして――イズミの手を握り返した。
「……ええ、是非」
ハッピーエンドはすぐそこに