いざゆかん、
戦場へ。
「とうとうこの時期がやってきた!」
力強く机を叩いて、スパンダムが立ち上がる。そしてビシッとルッチを指さした。
「ルッチ!」
「はい」
「おれがいない間の事務処理は、これまで通りお前に一任する」
「分かりました」
いつになく真剣な表情でルッチは頷く。これはCP9の今後の活動を左右する重大な案件なのだ。そして一年に一度、スパンダムが最も輝く案件でもある。
「打てるだけの手は打った。あとは本番でどれだけアイツらを揺さぶれるか、だ」
「勝算のほどは?」
「八割強ってとこだ。まず間違いなくおれは勝てる。不安要素はやっぱり鶴の一声ってやつだな、五老星が出しゃばってきたらおれも下がるしかねェし」
五老星に対してなんたる言い草、とは思わない。彼らに煮え湯を飲まされたことも一度や二度ではないからだ。その度にスパンダムは苦労したし、スパンダムに八つ当たりされたCP9のメンバーも苦労した。だからこの時期のスパンダムに対して、CP9の面々は驚くほど協力的だ。その方が自分たちの心労が減ると分かっているからである。
「必要な情報があればご連絡を」
「おう、そのときは頼むぜ」
そう言ってスパンダムは机の上にあった書類を手に取る。有能な役人は最終確認を怠らないのだ。
「こればっかりはお前らには任せられねェからな。……ま、おれの有能さをお偉いさん方に見せつける舞台だと思えば苦じゃねェよ」
手の内にある書類をくるくると丸めて、スパンダムはそれをぐしゃりと握りつぶす。集めた情報はすべて、外に漏れるとマズイ代物ばかりだ。その収集方法の問題もあるし、情報は独占してこそ意味がある。
スパンダムは部屋の壁にかけられた鳩時計に目を向けた。
「そろそろ時間か。これ、燃やしとけ」
「はい」
スパンダムから渡された紙の束に、ルッチは手に持っていたマッチを使って火をつける。その間にスパンダムはあらかじめ準備していたコートに袖を通し、部屋の中でもすもすと餌を食べていたファンクフリードの鼻を撫でた。そしてひとしきり撫で終えた彼は、グッと拳を握りしめ、高らかに宣言する。
「よし。……勝ち取ってくるぜ、今年の予算!」
***
一ヶ月後。
そこには望み通りの内容が記された書類を握りしめ、その手を高く掲げるスパンダムの姿があった。
いざゆかん、戦場へ。