祝えや祝え
ロブ・ルッチへの誕生日プレゼントとは、それ即ちハットリへの貢ぎ物である。
なにせこの殺戮兵器、おおよそ誕生日プレゼントの品としてあげられる物にまったく興味がない。好みの酒は自分で買うし、服飾系は手元にあるもので間に合っている。当然ケーキも好みではない。
しかし、しかしだ。幼少の頃から苦楽を共にした仲間からしてみれば、祝わないというのも居心地が悪い。祝えるのなら祝いたいのだ。
かといって、おめでとうの言葉だけ、というのも味気ない。祝うならちゃんと祝いたい。正確に言えば、何かを贈って、あわよくば喜んでもらいたい。もっともっと欲を言うのなら、笑ってほしい。
だからCP9のメンバーは幼少の頃より、あれこれと画策してきた。そしてことごとく失敗してきた。サプライズなんて食らってくれるタマではないし、ルッチの好みそうな物を贈ってみても、ただ受け取ってもらえるだけであった。もちろん、贈られた品々はきちんとルッチの部屋に飾られていたり彼自身が身につけていたりするし、ルッチが自身の感情を表に出すことなど滅多にないのだが、誕生日くらい笑った顔を見たいと思ったって許されるはずだ。
しかしこのロブ・ルッチという男、物欲も薄いので渡せる物にも限界がきてしまった。ここまできてしまえば、もはや意地である。なんとしてでも笑わせてみせると、CP9のメンバーは静かに燃え上がっていた。
そうして考えに考えたメンバーは、発想を逆転(?)させた。要はルッチが笑えばいい、喜べばいいのである。
ルッチはハットリが好きだ。幼少の頃から一緒にいるくせに好きじゃないなんて言わせない。ルッチはハットリが好きなのだ、好きに決まっているのだ、だから好きな人――鳥が喜べば、ルッチだって喜ぶに決まってるのだ。
そうと決まれば話は早い、早速ルッチとお揃いの品物を――と考えたところでメンバーは立ち止まる。そんなもの、既にルッチが準備しているに決まっているのだ。ネクタイにシルクハット、コートまでお揃いなのだから、その他の装飾品だってお揃いに決まってる。
ならばどうしようか。鳩豆か? 食事はルッチが厳格に管理しているから、下手なものを贈れば逆効果になりかねない。
さてどうしよう。
というか鳩が喜ぶものってなんだよ。
CP9のメンバーは律儀に頭を悩ませる。ああでもない、こうでもない。重要任務もかくやの悩み方であった。
そしてやってきた誕生日当日。ルッチへの贈り物に加えて、各々が思う『ハットリの喜びそうなもの』を準備して、プレゼント被りなんてものにも遭遇しながら彼らは言った。――誕生日おめでとう、と。
ひとつひとつ丁寧に目の前に置かれる品々に、ハットリは目を輝かせてくるくると鳴いた。嬉しそうに。
そしてルッチを見上げて、ばさばさと羽を広げるのだ。これまた楽しそうに。
そしてそして。
そんなハットリの様子を見て、ルッチは少しだけ、ほんの少しだけ、笑ったのだ。
どれだけ高価なプレゼントを贈られても笑わない、この男が。
グアンハオにいた頃から共にいる仲だ。ルッチが、メンバーから贈られてきた品物に何も思っていなかったわけではないのだと、彼らは知っている。本当に要らないと彼が思ったのなら、それらが彼の部屋に飾られるはずが、彼が身につけるはずがないのだ。
彼は、不要なものであれば他者から贈られたものだって躊躇いなく捨てる。彼の認めた、必要最低限の物だけが彼の部屋に存在することを許される。メンバーからの贈り物は、それに値する。
けれどそれとは別なのだ、この笑みは。
ハットリが喜んでいる姿が嬉しいのだ、この男は。
そんなルッチの様子を見て、さらにハットリが喜んでいる。いうなればそれは、喜びの永久機関であった。――目の前に広がるその光景に、CP9は今回の作戦が成功したことを確信した。
いいじゃないか、笑ってくれたのなら。
喜んでくれたのなら。
誕生日プレゼントなんて、そんなもんだ。
***
ロブ・ルッチへの誕生日プレゼントとは、それ即ちハットリへの貢ぎ物である。
今年もうんうんと頭を悩ませるメンバーに、どこかそわそわとしているハットリの頭をルッチが撫でてやれば、ハットリはくるっぽ、と嬉しそうに鳴いた。
祝えや祝え