あかいきおく
雲を渡って移動している最中、眼下に赤い島を見つけた。頭の中に収めている地理情報と照らし合わせて、それが秋島のひとつであることを導き出す。そうだ、この島は今の時期、紅葉狩りなるものを催していたはずだ。
写真でしか見たことがないが、それはもう美しい赤色なのだという。空からでは小さくしか見えないが、なるほど、空からでも映えるその色は、地上から見ればさぞ素晴らしいものになるのだろう。
そこまで考えて、ドフラミンゴは首を傾げた。そういえば、この知識はどこから仕入れたものだったか? 最近ではない、そう、もっと昔の――。
そして、ドフラミンゴは危うく雲から滑り落ちそうになった。慌てて糸を雲にかけ直し、体勢を整える。荒くなった息を落ち着かせようと意図的に呼吸を繰り返す。そうだ、あの秋島について書かれた本を見せてくれたのは、読んでくれたのは。
在りし日の聖地。戻ることのできなかったその世界で、確かに抱きあげてくれた二人の温もりと、その最期。
感傷的になるなと、ドフラミンゴは自身に言い聞かせた。あの日々は、あの温もりは、あの声はもう、戻らないのだから。
自身の手で、終わらせたのだから。その資格はもう、無いはずだ。
赤い島から視線を外し、遠くの雲に糸を張る。先ほどよりも少しだけスピードを上げて、ドフラミンゴは北の国を目指した。
無性に、弟に会いたくて仕方がなかった。
あかいきおく